フレームをパリンと割ったこと

フレームを曲げてしまった話を書きました。
そういえば、一度だけ走っててフレームにひびが入ったことがありました。
その話です。

大学3年のチームロードレース大会のことです。11月ごろだったと思います。場所は群馬サイクルスポーツセンター。1周6キロのアップダウンのあるコースを15周。1チーム4人で走り、走行時間を競うレースでした。

僕はその年の7月に完成したフレームで走ることにしていました。元々、長距離の選手ではなかったので、趣味的なつくりにしてもらい、ワイヤー類はすべてフレームに内臓するというレーサーではあり得ない工作をしていました。これが原因でした。

レースの前日、僕らはレースと同じ15周を4人で走ることにしていました。入賞する可能性があるならともかく、そうじゃないのなら、調整なんぞするよりは実力アップに役立つことをしよう、そんな考えだったと思います。

序盤はややスローペースで4人の足並みを確かめるように周回を重ねていきました。心臓破りの登りでダンシングすると、僕の自転車がギシギシ言うのが少し気になっていました。パーツが緩んでるのかな? 走り終わったら点検しなきゃ、なんて考えていました。

周回を重ねるうち、そのギシギシ音がだんだん大きくなってきたような・・・。それでも重大なことにはならないと高をくくっていましたから、淡々と走り続けていました。

周回も後半に入った頃でしょうか、登りでダンシングしているとき、右足をぐっと踏み込み右手でハンドルをぐっと引きつけた瞬間、自転車が「パリン!」という音を立てました。
「パリン?!」
自転車って、そんな音したっけ?
すぐ立ち止まって自転車を点検すると、あらーっ!
ダウンチューブの上方、変速ワイヤーがフレームに入っていく穴のところでパイプが真っ二つに割れておりました。

僕は何を考えたか?
「やった! これで明日走らなくて済むぞ!」
心はにやつき、だけど表情は残念そうに、「とにかくスタート地点に戻るわ」とチームメイトに告げ、コースを歩きだしました。他のみんなは残りの距離を走り出します。

フレームって割れるんだ。だからレース用ではあまり特殊な工作はしないんだな。鉄に余計な熱をいれて材質がもろくなることもあるだろうし、穴をあければそれだけ弱くなるし。しかし、自分のような非力な選手でもそうなってしまうとは。

スタート・ゴール地点に戻り、自転車の片付けや着替えをしていると、そこに4年生の先輩が現れました。就職活動のため実質的には引退していましたが、僕らを応援するために東京から自転車で走ってきたというのです。そして僕から事情を聞いて、「俺の自転車貸してやる。これで走れ。」

「ええーっ!!」

って、嫌とは言えないですね。
その晩、僕はメカニックのように先輩の自転車からすべての部品をはずし、自分の部品に組み替えました。そこまでしなくてもとみんな言いましたが、僕のこだわりでした。翌日、僕は寸法の合わないフレームに乗って、90キロを完走しました。

そしてその晩、またその自転車からすべての部品を取り外し、先輩の部品を取り付けてお返し致しました。

本日の副題「やっぱり違いのわからない男」